手紙

映画バージョンの「手紙」を見る。
原作の肝である、自分が殺人犯の弟だと分かったとたん、昨日まで仲良かった人、親切だった人がなんとも言えない距離を作って遠のいて行ってしまう描写が皆無になってしまう。
しかも遠のいて行ってしまう人は、薄情な人みたいな描かれ方で、原作で十重二十重に丁寧に描かれていた、クラスメイトに、バイト先の仲間に、バンド仲間に、職場に、社宅にいる人が殺人犯の弟というものになってしまったら、自分はいったいどうするんだろうという読んでいる人に常に投げかけられる緊張感みたいなものがない上に、他人事というか、かわいそうな話になってしまっていて、非常に残念でした。
あと、殺人を犯すお兄さんが、殺すつもりもなくうっかり刺さってしまったという程度だったのと、主人公の結婚相手が沢尻さんが演じているのもかわいすぎて*1、映画を製作した人はいったい何を読んでこれを作ったのか謎です。見に来た人をしんどくさせるほどの投げかけをする映画というのは、なかなか商業映画で成り立ちにくく、かわいそうだねえという映画を作った方がいいのは分かるけど。
そんなわけで、斉藤さんが「泣ける、いい映画」みたいなことを思ったのは、とてもよく分かりました。でも「手紙って、いいよね。私も書かなきゃ」とは、映画を見ても思いにくかった。やっぱり斉藤さんって私にとって、難解です。

手紙 スタンダード版 [DVD]

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*1:原作では、主人公は自分の好みでは全くなく、どちらかというと疎ましいけれど、人生を生きていく上での共闘者としての側面から愛おしく思う。